CEOビジネスレビュー
CEOビジネスレビュー
株主の皆様へ、
2021年度は、グループにとって重要かつ特別な一年となりました。2020年度の7.5百万米ドルの損失計上が確定した年初時点では、2021年度は厳しい一年になると思われました。しかしながら、2020年度における日本でのホテル運営事業の持分売却後、残された全ての事業部門がコロナ禍で最高のパフォーマンスを発揮し、グループ収益の「V字回復」を達成することを2021年度の至上命題として取り組んで参りました。その結果、2021年度の純利益はグループ設立以来の最高益となる18百万米ドルを達成することが出来ました。期末配当および特別配当合わせて、一株当たり0.05シンガポールドルの配当金を支払う予定です。2021年9月に実施した中間配当を含めた2021年度の通期配当金は、一株当たり0.07シンガポールドルとなります。
船舶部門
船舶投資ポートフォリオの最適化を実現するため、グループが十分な経験とノウハウを有するハンディサイズ型ばら積船への投資に特化することを決定いたしました。2020年度末にかけて海運市況が回復基調を見せ始めた段階で投資するコンテナ船の処分を開始し、2021年度上期までに全てのコンテナ船の売却を行いました。当該売却により、売却益1.4百万米ドル、貸付金償却の戻し入れ1.0百万米ドル、減損損失の戻し入れ0.4百万米ドルなど、2021年度のグループ利益に2.8百万米ドルの貢献がありました。
同時に、ばら積船市況が上昇軌道を描き始める中、グループの用船部門は、潜在的な市場の下落リスクや信用リスクを管理しながら、グループの用船収入の最大化に努めて参りました。28,000載荷重量トン型ばら積船については、短期スポットレートに近い水準での用船料成約を狙い短期用船契約を行う一方で、中古船の売買市況を注視し売却機会を探っています。サイズの大きい37,000載荷重量トン型ばら積船はやや長めの用船期間を志向し、用船料は短期用船の場合より高くはないものの、長めの用船期間が市況軟化の際のバッファーとして機能します。グループ用船部門の努力の結果、船舶部門は2021年度に2020年度比57%増の47.8百万米ドルの用船料収入を達成致しました。
一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各国の港湾当局が船員の上陸と乗組員の交代を制限し、その結果、船員は長期間の乗船を強いられ、身体的ならびに精神的な疲労に苦しむという問題が表面化しました。グループの船舶運航部門は、用船者ならびにその他関係者と24時間体制で協働し、前述の問題を最小化すべく可能な限りの船員交代の実施に努めると同時に、定期用船中の船舶の円滑な運航を図る為に必要な経費支出を増やしました。その結果、2021年度の船舶運航費用は2020年度比で7%の増加となりました。
船舶部門全体では、2020年度の10.4百万米ドルの損失から一転し、22.0百万米ドルの当期利益を計上することができました
不動産投資‐香港不動産事業
中国本土と香港の「ゼロコロナ政策」により、原則、香港の国境は検疫を望まない入境者に対し閉鎖されています。従って、コロナ感染拡大が継続している状況下、中国本土の投資家による香港不動産への投資活動はスローダウンしています。購買活動が減少している中、売り急ぐ必要のない売り手は、市場価格の下落を避けるため引き続き様子見の姿勢をとっています。
このような状況下、グループが手掛ける香港不動産投資第4号ならびに第5号案件は販売準備が整い、第6号案件は2022年中の竣工を予定しています。当該プロジェクトを主導しているデベロッパーは、販売代理店や購入希望者と緊密に連携し、プロジェクトの目標価格の範囲内で販売取引を成立させるべく努力しております。グループとしては、香港入境に係る水際対策の緩和がなされることにより、香港の不動産市場は速やかに活性化することを期待しています。上記要因から、2021年度の不動産投資セグメントの当期利益は0.1百万米ドルにとどまりました。
不動産投資(日本)
新型コロナウイルス感染の発生当初、新規小規模住宅開発案件「ALERO」の開発用地取得は不安視されていましたが、2020年度は結局12件の開発用地を取得することができました。しかしながら、市場が安定化するにつれて土地の価格が上昇し、想定されるリターンが低下したため、2021年度に新規で取得した「ALERO」開発用地は5件にとどまりました。にもかかわらず、2021年度中に11件の「ALERO」案件が完成し、2021年末時点で10件の案件が進行中です。同時に、グループの日本におけるアセットマネジメント子会社であるユニ・アジア・キャピタル(ジャパン)株式会社(以下「UACJ」)は、新たな不動産運用案件の発掘を継続しております。その一つが、障害者支援のためのグループホームファンドの開発です。2021年8月、グループは事業パートナー2社と共同で、5棟のグループホームを開発するファンドを設立致しました。開発後、これらのグループホームは専門のオペレーターにより運営される予定です。
更に、2019年にUACJ率いるコンソーシアムが落札した埼玉県和光市の公共施設整備事業が、2021年12月に正式に開業しました。このプロジェクトは、児童センター、医療施設、公共プール、温泉を含む公共利用施設を建設し、運営するPFI事業です。正式開業後、UACJ主導のコンソーシアムが20年間施設を運営する予定です。20年間の運営契約終了後、和光市はコンソーシアムから施設を買い戻します。
上記のプロジェクトは、不動産運用資産、特に社会に積極的に貢献するプロジェクトを増やすというUACJの取組の成果です。2021年12月31日現在、UACJの不動産運用資産は327億円規模となっております。
2021年度の不動産投資(日本)セグメントは1.5百万米ドルの当期利益を計上し、グループ利益に貢献しました。
持続的成長へのコミットメント
2020年度アニュアルレポートの「エグゼクティブチェアマンとCEOの共同メッセージ」で、グループの持続的成長へのコミットメントを表明致しました。2021年度はV字回復を達成し、業務の効率化と有効性を高めるためのIT導入プロジェクトもスタートしました。
長期的には、より強固なバランスシートを構築して参ります。2021年度末時点で、借入金総額は2020年度末の114百万米ドルから83.8百万米ドルまで減少し、負債比率は1倍を下回っています。また、営業活動によるキャッシュフローは前年度より増加しております。
今後もタイムリーな資産売却、債務圧縮、流動性の向上など、バランスシートの強化に努めます。同時に、既存事業・新規事業を問わず、より収益性の高いプロジェクトに資金や人材を再配分し、収益性を最適化するよう努める所存でございます。
グループは、「たゆまぬ挑戦により、新しい価値を創造し、社会に貢献すること」を経営理念としています。進化し続けるビジネス環境の中で、私たちは進化と適応の必要性を痛感しております。進化と適応、そして新たなビジネスチャンスの開拓を通じて、グループの持続可能な収益性を高め、持続的な配当利回りを実現し、グループの長期的な真の価値を反映した株価を実現するために、より一層努力して参ります。
ユニ・アジアグループリミテッド
2022年3月16日