エグゼクティブチェアマンのメッセージ

株主の皆様へ、

取締役会を代表致しまして、2023年度12月期のユニ・アジアグループリミテッドとその子会社(以下、「グループ」又は「ユニ・アジア」)の事業報告をさせて頂きます。

2023年度のレビュー

グループは2023年度に5.1百万米ドルの利益を計上致しました。船舶部門は10.0百万米ドルの利益を計上しグループの利益を牽引しました。特にグループ100%保有船の売船により7.5百万米ドルの売船益を計上し、マリタイムアセットマネジメントセグメントは2.0百万米ドルの利益を達成致しました。

グループ全額出資形態で保有するばら積船の2023年度1日当り平均用船料は、建造年が比較的新しい船舶(38千積載重量トン)が13,000米ドル近く、比較的古い船舶(29千積載重量トン)が8,300米ドル程度でありました。そのため、グループはアセット・マネージャーとして、ポートフォリオのリターンを向上させるとともに、将来、より環境への配慮がなされた仕様の新造船を購入するための資金を準備するため、29千積載重量トンの旧型船舶を売船する機会を探ってきました。実際、ばら積船用船市況が軟化したとはいえ、ばら積船の中古船価格が堅調に推移した2023年には、29千積載重量トンの旧型船舶を売船する好機が到来しました。これは、過去2年間のコンテナ船とガス運搬船の新造船受注による造船所の高い稼働率に牽引され、新造船価格が過去1年間で高騰したことに起因するものです。このためグループは、2023年末に船舶ポートフォリオで最も古い船であるUni Auc Oneを売船し、2.3百万米ドルの売船益を計上致しました。本船は借入がないため、7.5百万米ドルの純収入はすべてグループの現預金残高に計上となりました。2024年1月、船舶ポートフォリオの中で2番目に古い船舶であり、グループ100%子会社であるFulgida Bulkship S.A社が保有する2009年建造のばら積船M/V Uni-Wealth(29千積載重量トン)の売船契約を締結致しました。売船は2024年3月に完了致しました。2020年、本船について、当時の状況に基づき1.7百万米ドルの減損を計上致しましたので、2024年の売買契約締結に伴い、グループは2023年12月31日時点の1.7百万米ドルの減損のうち、売却価格に基づいて1.15百万米ドルを戻入れしました。2024年12月期において、本売船による更なる戻入れは見込んでおりません。また、グループが共同投資形態で49%株式を保有するMatin Shipping社保有の船舶も売船致しました。本売船の結果、Matin Shipping社から1.4百万米ドルの回収があり。さらに、グループは他の共同投資形態で保有する船舶からも1.1百万米ドルの配当金を受領致しました。これらは 前述したマリタイムアセットマネジメントセグメントの2.0百万米ドルの利益に貢献致しました。

グループの不動産部門は、香港不動産投資案件の時価評価損により、1.7百万米ドルの損失を計上致しました。米国及び香港が低金利であったパンデミック以前は、人民元が米ドルに対して強く、また香港ドルが米ドルに固定されているため、中国からの投資資金が香港に流入していました。現在の状況は全く逆で、人民元は米ドルに対して弱く、米国と香港の金利が高く、その結果、中国本土からの香港の不動産購入が割高となり、香港不動産市場の低迷に拍車をかけています。従い、グループは2023年度、香港不動産投資案件について2.1百万米ドルの時価評価損を計上する結果となりました。2024年後半には米国の利下げの可能性があり、慎重ながらも市場関係者は状況が改善すると見通している一方、状況が悪化した場合には、グループはさらなる時価評価損を計上する可能性があります。

日本の不動産投資セグメントについて話を移します。日本の不動産市場は引き続き堅調であり、グループは3件の開発中不動産案件を売却し、1.4百万米ドルの利益を計上致しました。2023年度は、当該セグメントの投資収益も増加し、結果2023年度は、2022年度比12%増の1.2百万米ドルの利益を達成致しました。

このように2023年度は船舶及び日本の不動産部門の安定した業績に支えられ、5.1百 万米ドルの利益を達成することができました。これらの業績を受け、一株当り2.2シンガポール・セントの配当を2024年5月31日に実施すべく、来る年次株主総会にご提案させて頂くことを取締役会で決議致しました。2023年9月に支払われた一株当り2.2シンガポール・セントの中間配当金と合わせると、2023年度の配当総額は一株当り4.4シンガポール・セントとなり、2023年度利益に対する配当性向は51%となります。

融合する強みと多様化する可能性

グループにとって、船舶と不動産からなる多様なポートフォリオを持つことが強みであり、それにより、各資産クラスの異なるビジネスサイクルにおいて、2つの資産クラスが互いに補完し合うことができます。しかしながら、各資産クラスの可能性を再検討し、それに応じてバランスを取り直す必要があります。

船舶ポートフォリオについては、旧型船舶を売船する必要があります。売船からの資金は急ぎ新たな船舶購入に投資するのではなく、サイズやエンジンの種類を含め、可能な船種を検討し、グループにとって最適なポートフォリオを決定致します。同時に、既存船舶の用船管理を積極的に行い、可能な限り最高のリターンを確保する所存です。

香港の不動産投資案件については、共同投資の主要パートナーが、仲介業者に対してより高い販売手数料を提供し購入者を誘致するなど、竣工した物件の販売に懸命に取り組んでいます。その間、現在のエクスポージャーをこれ以上増やすことはないよう、リスク管理に努める所存です。

日本の不動産投資案件については、ALERO案件以外にも、PFI、太陽光発電、グループホーム、ヘルスケア案件など、より多様な不動産資産を含むアセットマネジメント・ポートフォリオを拡大していく所存です。

持続可能性とAI(人工知能)は、現在の経済情勢における主要なトピックであり、グループは投資の枠組みを再検討し、持続可能性を投資目的の一部に含めるようプロセスを調整していきます。効率性とリターンを向上させるために、AI(人工知能)を含むテクノロジーの機会を模索します。人材と専門知識の強みを活かすことで、リターンの可能性をさらに多様化したいと考えています。

リーダーシップの継承

すでにお知らせしておりますように、福宿謙二氏は2024年2月29日をもってCEOを退任致しました。2021年、2022年に過去最高益を達成させるなど、福宿氏の長年にわたる堅実なリーダーシップに、この場をお借りして感謝申し上げます。福宿氏はグループのCEOとしてだけでなく、グループに在籍した期間を通じて、グループに多大な功績を残してくれました。

福宿氏退任に伴い、2024年3月1日からの新CEOに岩渕昌浩氏を迎えました。岩渕氏はグループの設立当初から在籍しており、非常に有能で経験豊富なリーダーです。岩渕氏のリーダーシップにより、グループは可能性と目的に満ちた未来へと舵を切ることができると確信しています。

最後に

先行き不透明な1年を迎えるにあたり確かなことは、株主の皆様、グループの取締役、経営陣、従業員、お取引先、ビジネスパートナー、そして金融機関の皆様の揺るぎないご支援がなければ、過去数年間達成してきたような業績を達成することはできなかったということです。株主の皆様、経営陣、従業員、お取引先、ビジネスパートナー、金融機関の皆様の変わらぬご信頼とご支援に心より感謝申し上げます。ユニ・アジアは、共に成功を分かち合いながら着実に前進し、同時に持続可能な未来を築いて参ります。

棚元 道夫
エグゼクティブチェアマン
2024年3月15日